1、内部通報・相談窓口の必要性
○経営トップの意識
何よりもまず、経営トップがコンプライアンスの重要性を認識し、先頭に立って取り組んでいくという意識が絶対に必要です。これがなければ制度を運用してもいずれ形骸化してしまい、実際に事故や不祥事が発生した際には逆に多大な損失を負うことにもなりかねません。
○法令知識の補完
不祥事の多くは、「会社の利益のため」という意識の元で行われることが少なくありません。また、そもそもその判断が法令に抵触しているという認識すらないこともあります。さらに、
事業そのものが所轄官庁からの許認可が必要な事業だったり、法令の改正によって許認可基準が変更されていたにもかかわらず、その法令の存在自体も知らなかったために、知らず知らずのうちに違法操業を行っていたなどということもあり
えます。
このようなことが発生しないように、各部門や社員一人ひとりが日常から気軽に相談できる窓口を設置することが必要です。法令に抵触してしまうリスクは役員室ではなく、現場の日常業務の中にこそ多く存在しているのです。
○法令抵触事実の早期発見・早期対応
不祥事を早期発見し、いち早く対応するには内部通報・相談窓口の設置は欠かせません。マスコミに報道される事件の多くは、社内の関係者による内部告発によって表面化します。外部への告発によって事実が発覚した場合には、情報を調査し、整理した上で対応を考えることは
全く不可能となってしまいます。そのため、整理されないままの情報や不正確な情報がどんどん外部に流出し、その結果、大きな社会的非難を浴びたり、取り返しのつかないダメージが発生したりします。
内部通報・相談窓口が有効に機能していれば、まずここで不祥事を把握し、事実関係の調査、原因究明を十分に行い、社内での再発防止対策や外部への対策を検討した上で、
外部への情報開示をすることができ、損失を最小化することもできます。
ただし、この制度はマスコミや監督官庁などへの情報開示を避けることが目的なのではありません。外部への告発を排除して不祥事を社内で処理し、その事実を隠蔽してしまうことは、新たなリスク発生の原因を生み出していることにもなります。
2、制度構築にあたっての検討課題
○担当部門
内部通報・相談窓口の担当部門は、法務部や総務部等社内の管理を行っている部門の所管にすることが多いと思います。このとき、注意するべきなのは、担当部門で情報を一元的に管理し、社外
に情報が流出しないようにすることはもちろん、社内であっても情報が流出することのないよう徹底した情報管理を行うことが必要です。
また、守秘義務を徹底するためには社外に内部通報・相談窓口を設置することも効果的です。ただし、徹底した情報管理契約を締結しなければなりません。弁護士事務所等、法律によって守秘義務が課されているところを窓口とすることも非常に有効です。
○制度の設置趣旨と対象範囲
●相談受付の手段
内部通報・相談の受付は、電話・FAX・郵便・メール等の手段が考えられます。いずれの手段を採用するにしても、特に通報の場合には他者からは認識ができない手段を講じなければなりません。実際に通報者と接触する場合には、他の社員に知られることのないように、社外の安全な場所で接触するといった注意も必要になります。
●顕名のみか?匿名も含めるか?
通報を受付する際、顕名のみとするか、それとも匿名の通報も受け付けるかは、十分に検討する必要があります。顕名のみであれば、情報が比較的正確であり該当の部門を特定することも容易ですが、匿名の情報では、情報の信頼性から調査する必要が生じますし、該当部門を特定することも困難になりがちです。さらに、単なる誹謗中傷
が行われることもありえます。
ひとつの解決策としては、顕名でも匿名でも受付できるようにしておき、匿名の通報者でより詳細な調査が必要な場合には、守秘義務を課して契約した外部機関によって通報者に直接接触することも考えられます。
●通報者保護対策
内部通報・相談窓口制度を構築する際、通報者を保護する手段を確実に確保しておくことが、極めて重要です。万一、通報者を特定できる情報が流出してしまえば、
その瞬間にこの制度に対する社員の信頼は根底から崩れてしまいます。
制度の導入にあたって、通報者の情報は厳重に管理され、決して外部には流出しないこと、通報者本人が不利益を蒙ることがないことを明確に規定し、それを全社員に周知することが必要です。
●通報後の対応方法
通報があった場合には、通報者に対して守秘義務が遵守され通報者が不利益を蒙ることがないこと、一定のスケジュールで社内調査が開始されることを十分に説明することが必要です。通報を受けておきながら、何もせず握りつぶしてしまうことだけは絶対に避けなければなりません。
●調査手法
通報があった際に、その後の調査をどのように行うかについては、十分に検討する必要があります。特に、該当の部門を調査することで通報者が特定されてしまうことは絶対に避けなければなりません。なので、こういう場合は全社を対象とした一般的な調査をおこなったり、外部の機関による通常調査を装ったりすることも有効です。場合によっては、他部門でも事態が発生していることもありえますので、少しまわり道になったとしても、外側からしっかり調査していくべきです。
3、制度設置後の対応
内部通報・相談窓口は、有効に活用できてこそ、その真価を発揮します。そのためには、制度自体が眠ってしまうことのないようにしなければなりません。単に不祥事や不正を通報するだけの機関では、たくさんの通報があろうはずもなく、いつの間にか忘れられてしまいます。
担当部署は、社内報やイントラネットを使用して常にコンプライアンス情報を自ら発信し、また日常業務の中で生じた社員のちょっとした疑問にも答えるようにするべきです。
こうすることで、社員の中にコンプライアンス意識も芽生えてきます。それが何より不正や不祥事を防止する原動力となるのです。
4、当事務所でお手伝いできること
当事務所では、内部通報・相談窓口の構築を予定されている企業に対して、設置に必要な環境を整備し、担当部門と共に各社にマッチした内部通報・相談窓口の構築を行います。必要に応じて、当事務所を外部窓口として機能させることもできます。
また、制度構築後の運用管理や、部門担当者からの相談受付業務も行っています。
